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寅一 Toraichi.

寅 一  [Toraichi]

 真っ白で綺麗な暖簾をくぐると 「いらっしゃい。」 と威勢の良い声と優しい笑顔

 一目でお店全体が見渡せる様なこじんまりとした小さな箱

扉を開けた瞬間暖かい空気が自分を包み込む

大将の手の届く範囲のカウンターとこじんまりとしたテーブール

テーブルの上にはそれぞれ小さいながらに手を施した一輪挿し。古びた小さなイスを引き

カウンター席に座る。

炭のはじける音とかすかに香る炭の香り、ほど良い音で流れるジャジーなBGM

しっかりとアイロンのかかった制服、胸元には 「寅一」 と赤い刺繍

心地良い高下駄の音、指先から頭の頂上まで極上の清潔感のある男

コツコツと作業しながらもマイペースで機敏に動くリズミカルな流れ

タイミング良く ほのかに優しい香りの真っ白なお絞り

手にとるとほど良い温かさで厚みのあるお絞りが 冷え切った手を包み込む


「お疲れ様です。お飲み物は」 ゆっくりと丁寧な口調

「生ビール」 と一言

「ありがとうございます」 と軽快な言葉と優しい笑顔

わずかなふれ合いの中で 男の優しさ、一筋さ、店や客に対しての意気込みが伝わる

不安な気持ちで暖簾をくぐった自分を 一瞬で安心間と期待感に包み込む

心の中で 「当たりかな・・・。」 とつぶやく


「お待たせしました 失礼します。」 とスモーキーバブルスいっぱいの黄金でクリーミーなビール

「ありがとう」 心はすり切れいっぱいに入った 7:3 の黄金比率生ビールに

ドリンクと同時に繊細に小鉢に盛り付けられた心温まる先付け

まずは 黄金生ビールを、乾き切った喉に補給する

冷たいビールが喉を通い一日の仕事の疲れやストレスをアルコールで洗い流す

一言 

   「旨い」   すべてに 「感謝!」 「ありがとう」


カウンターからさりげなく

 

「お疲れ様です。」


「箸おき」に置かれた黒竹の箸を口を使って片手で割る

   「パッキ」    軽快な音が店全体に響き渡る


「御注文は」   右耳に競艇を思わせるような カッターで削った芯が長めの赤色えんぴつ

厨房の上に手書きで掲げられた木版のメニューに一串ずつの価格が記載されている


「トリフォア、ちょうちん、せせり、手羽先、とりわさ」


「はい。トリフォア・・・・・。」


注文を気持ちの良いハキハキとした声でおうむ返し


「有難うございます。本日のおすすめは浜名湖産 大粒牡蠣の炭焼きがございますが」


「それもお願い」 


「有難う御座います。」 何度聞いても気持ちの良い心のこもった声


注文を聞き終えると、手を洗いシンク横に綺麗にたたんで置かれた「黒色」のタオル水気をとる


炭の状態を確認し、2~3回赤いうちわで灰を落とし 換気扇を強める

真っ白なまな板にアルコールスプレーを軽く拭きかけ

真っ白な布きんでまな板を拭き 研ぎ澄まされた光り輝く柳刃を用意する

銀色に光輝く 「恒温高湿庫」 から 串ネタと地鶏ササミを取り出しすかさず冷蔵庫を閉める

冷蔵庫の温度計を確認し作業に入る


白肝を秘伝のタレにくぐらせ3回タレをきり 炭焼台にそっと載せる


載せた瞬間 白い煙と同時に


「ジュワー」  とタレの焼ける音


五感をくすぐる     目、耳、鼻へと味が伝わる

舌からよだれがにじみ出る  黄金ビールを飲みながらそれを眺め無心になる